公訴時効撤廃を殺人以外にも拡大要請へ「宙の会」が2025年3月に陳情決定

公訴時効撤廃を殺人以外にも拡大要請へ「宙の会」が2025年3月に陳情決定
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2025年3月、殺人事件の被害者遺族らでつくる団体「宙の会」が、新たな動きを見せた。これまで殺人罪についてのみ撤廃されていた公訴時効を、殺人未遂事件や死亡ひき逃げ事件にも拡大するよう国に求める方針を決めたのである。愛する家族を理不尽に奪われ、それでも犯人が捕まらないまま時が過ぎていく——そんな苦しみを抱える遺族たちの切実な訴えが、再び社会に問いかけられている。「逃げ得」を許さない社会の実現に向けて、いま私たちは何を考えるべきなのだろうか。

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事件の全体像

宙の会は2025年3月7日に総会を開催し、殺人未遂事件や死亡ひき逃げ事件についても公訴時効を撤廃するよう求める陳情書を国に提出することを正式に決定した。この決定の背景には、現行法では救済されない多くの遺族の存在がある。

そもそも公訴時効とは何か。これは、犯罪が発生してから一定期間が経過すると、検察官が起訴できなくなる制度である。日本では2010年の刑事訴訟法改正により、人を死亡させた罪のうち死刑に当たるもの(殺人罪など)については公訴時効が撤廃された。しかし、被害者が死亡しなかった殺人未遂事件や、加害者が特定されていない死亡ひき逃げ事件などは、依然として時効の壁が立ちはだかっている。

宙の会の総会では、2004年に愛知県で発生した殺人・放火事件の遺族である天海としさんも思いを語った。この事件では、天海さんの妹である加藤利代さん(当時38歳)と、その子ども3人の命が奪われている。発生から20年以上が経過した今も犯人は捕まっておらず、天海さんは「捕まえてもらえるのは、警察だけだって最初から思っています。忘れずにがんばって前を向いて信じて活動していきたいなと思っています」と語った。詳細については「逃げ得許さない」宙の会が殺人未遂・死亡ひき逃げの時効廃止を国に要望【2025年3月】でも報じられている通りだ。

この動きは、単に一つの団体の活動にとどまらない。未解決事件の遺族が抱える苦悩、そして日本の刑事司法制度のあり方そのものを問う、極めて重要な問題提起なのである。

公訴時効撤廃を殺人以外にも拡大要請へ「宙の会」が2025年3月に陳情決定
※本画像はAIにより生成されたイメージです

被害の実態と手口の詳細

公訴時効の壁に阻まれている事件は、実は想像以上に多い。そして、その一つひとつに、癒えることのない悲しみを抱えた遺族がいる。

殺人未遂事件を例に考えてみよう。被害者が命を取り留めたとしても、重度の後遺症を負うケースは少なくない。一生涯にわたって介護が必要になったり、精神的なトラウマに苦しみ続けたりする被害者もいる。それでも、現行法では殺人未遂罪の公訴時効は25年。つまり、どれほど残虐な犯行であっても、25年間逃げ切れば法的には罪を問えなくなるのだ。

死亡ひき逃げ事件はさらに深刻である。自動車運転処罰法における「過失運転致死罪」の公訴時効は10年、「危険運転致死罪」でも20年だ。夜間の事故や目撃者が少ない場所での事故では、犯人特定に長い時間がかかることも珍しくない。その間に時効が成立してしまえば、遺族は永遠に真相を知ることができないまま、宙ぶらりんの状態に置かれ続ける。

考えてみてほしい。自分の大切な家族が殺されかけた、あるいは事故で命を奪われた。それなのに、犯人が「時間さえ稼げば逃げ切れる」という制度が存在するのである。これが「逃げ得」と呼ばれる所以だ。

近年、凶悪事件の手口は多様化・巧妙化している。道頓堀殺傷事件の全容|17歳少年3人襲撃で21歳男を殺人未遂で再逮捕へのような事件では、被害者が若者であり、一歩間違えば命を落としていた可能性もあった。殺人未遂と殺人の境界線は、時に紙一重である。それにもかかわらず、両者の間には公訴時効という決定的な差が存在するのは、果たして公正と言えるのだろうか。

また、姫路バー襲撃事件でトクリュウ男7人逮捕 25歳男性が頭部殴打・背中刺され重傷のような組織的犯罪では、首謀者の特定に時間がかかることも多い。時効制度は、こうした組織犯罪の「逃げ得」を助長しかねない側面も持っているのである。

背景にある社会問題

なぜ公訴時効という制度が存在するのか。その理由を理解しなければ、この問題の本質は見えてこない。

従来、公訴時効制度の存在意義として挙げられてきたのは、主に三つの観点だ。一つは「時間の経過により社会の処罰感情が薄れる」という考え方。二つ目は「証拠の散逸により公正な裁判が困難になる」という実務的な理由。そして三つ目は「長期間逃亡生活を送ること自体が一種の社会的制裁になっている」という見方である。

しかし、これらの論拠は、被害者遺族の視点からすれば到底納得できるものではない。遺族にとって、時間の経過で悲しみが薄れることはない。むしろ、犯人が捕まらないまま時が過ぎていくことで、苦しみは増していくことすらある。

2010年の法改正で殺人罪の公訴時効が撤廃された際も、「被害者の命の重さ」と「遺族の処罰感情は時間が経っても消えない」という点が重視された。では、殺人未遂事件の被害者や遺族の感情は、それほど軽いものなのだろうか。死亡ひき逃げ事件で亡くなった方の命は、殺人事件の被害者より価値が低いのだろうか。そんなはずがない。

近年の科学技術の発達も、この議論に新たな視点をもたらしている。DNA鑑定技術の飛躍的な進歩により、数十年前の証拠からでも犯人を特定できるケースが増えてきた。監視カメラの普及、デジタルデータの解析技術の向上など、「証拠の散逸」という従来の懸念は、かつてほど大きな障壁ではなくなりつつある。

また、大津保護司殺害事件で無期懲役判決「無差別殺人と同等」地裁が厳しく指摘のように、近年の裁判では被害者・遺族の心情がより重視される傾向にある。司法の場でも「被害者の視点」が重んじられるようになってきた今、公訴時効制度だけが旧態依然としたままでいいのかという疑問は、当然のものだろう。

国際的に見ても、重大犯罪の公訴時効を撤廃・延長する動きは広がっている。宙の会の活動は、日本の刑事司法制度を国際水準に近づけるための重要な一歩とも言えるのではないか。

捜査・裁判の現状と今後の展開

宙の会が提出する陳情書を受けて、国はどのように対応するのだろうか。法改正の道のりは、決して平坦ではない。

2010年の殺人罪等の公訴時効撤廃に至るまでにも、長い年月と粘り強い活動が必要だった。当時も「冤罪の危険性が高まる」「被告人の防御権が侵害される」といった反対意見が根強くあった。今回の殺人未遂・死亡ひき逃げの時効撤廃についても、同様の議論が予想される。

法務省や国会がこの問題にどれだけ真剣に向き合うかは、世論の動向にも大きく左右されるだろう。遺族の声を「他人事」として聞き流すのではなく、自分自身や自分の家族が被害者になりうる可能性を想像することが、社会全体に求められている。

実際の捜査現場では、時効の壁と闘いながら地道な捜査を続けている警察官も少なくない。しかし、時効が迫ると捜査態勢が縮小されるのも現実だ。時効制度は、捜査機関のモチベーションにも影響を与えているのである。

天海さんが「捕まえてもらえるのは、警察だけ」と語ったように、遺族は警察を信じて待ち続けるしかない。その信頼に応えるためにも、そして遺族に「諦めるしかない」と思わせないためにも、制度の見直しは必要ではないだろうか。

今後の展開として、宙の会は国会議員への働きかけを強化していく方針だ。与野党を超えた超党派の議員連盟が結成されるかどうかが、法改正実現の鍵を握るとみられる。また、パブリックコメントの募集など、一般市民が意見を表明できる機会も設けられる可能性がある。

私たちが身を守るためにできること

公訴時効の問題は、一見すると「自分には関係ない」と思えるかもしれない。しかし、犯罪被害は誰の身にも起こりうるものだ。いざという時のために、知っておくべきことがある。

まず重要なのは、犯罪被害に遭った場合は、速やかに証拠を保全することだ。事故現場の写真撮影、目撃者の連絡先の確保、診断書の取得など、後々の捜査や裁判で必要になる証拠は、時間が経つほど失われていく。特に交通事故の場合、ドライブレコーダーの映像は重要な証拠となりうる。

被害者支援制度についても知っておきたい。各都道府県には「被害者支援センター」が設置されており、無料で相談を受け付けている。精神的なケアから、捜査機関への付き添い、裁判手続きの支援まで、様々なサポートを受けることができる。

また、水戸ネイリスト殺害事件、車とぬいぐるみに発信機|男をストーカー容疑で再逮捕のような事件からもわかるように、日常生活の中で「何かおかしい」と感じたら、早めに警察や専門機関に相談することが重要だ。ストーカー被害などは、エスカレートする前に対処することで、最悪の事態を防げる可能性がある。

社会全体として取り組むべきこともある。未解決事件の情報提供への協力は、その一つだ。「何年も前のことだから」と思わず、少しでも心当たりがあれば警察に連絡することが、事件解決につながることもある。

そして何より、この問題に関心を持ち続けることが大切だ。宙の会のような団体の活動を支援したり、公訴時効制度についての議論に参加したりすることで、一人ひとりが「逃げ得を許さない社会」の実現に貢献できる。選挙の際に、各候補者や政党がこの問題にどのような姿勢を示しているかをチェックすることも、有権者としての責任ではないだろうか。

犯罪被害は、決して他人事ではない。今日の「傍観者」が、明日の「当事者」になる可能性は、誰にでもあるのだから。

まとめ

宙の会が殺人未遂・死亡ひき逃げ事件の公訴時効撤廃を国に求める決定をしたことは、日本の刑事司法制度にとって重要な転換点となりうるものだ。2010年の殺人罪等の時効撤廃から15年、その延長線上にある今回の動きは、「被害者の命の重さに区別はない」という当然の理念を法制度に反映させようとする試みである。

愛知県の殺人・放火事件で妹と3人の子どもを亡くした天海さんの「信じて活動していきたい」という言葉には、20年以上にわたる苦しみと、それで

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