被害金十数億円を暗号資産で洗浄か「相対屋」の男3人逮捕 巧妙手口の全容

被害金十数億円を暗号資産で洗浄か「相対屋」の男3人逮捕 巧妙手口の全容
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詐欺によって奪われた金が、まるで霧のように消えていく——。被害者が必死の思いで訴えても、その金の行方はつかめない。そんな理不尽な現実の裏側には、犯罪収益を「洗浄」する専門家たちの存在があった。2025年5月、警視庁は特殊詐欺グループから依頼を受け、被害金十数億円を暗号資産に変換するマネーロンダリング(資金洗浄)を行っていたとされる男3人を逮捕した。彼らは「相対屋」と呼ばれる闇の両替商であり、その手口は極めて巧妙だった。被害者の涙を踏みにじるこの犯罪の全容に迫りたい。

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事件の全体像

今回逮捕されたのは、いずれも東京都内に住む30代から40代の男3人である。警視庁の発表によると、彼らは2023年から2024年にかけて、特殊詐欺グループが騙し取った現金を暗号資産に変換する業務を組織的に行っていたとされる。その総額は十数億円に上るとみられており、まさに桁違いのスケールで犯罪収益の洗浄に関与していた疑いが持たれている。

逮捕容疑は組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)だ。彼らは「相対屋」として活動していた。聞き慣れない言葉かもしれないが、これは暗号資産の世界で取引所を介さずに、個人間で直接売買を仲介する業者のことを指す。本来であれば合法的なビジネスとして成立しうるものだが、この3人はその仕組みを悪用し、出所の怪しい現金を追跡困難な暗号資産へと変換していたのである。

捜査の端緒となったのは、複数の特殊詐欺事件の捜査過程で浮上した不審な資金の流れだったという。詐欺グループの「かけ子」や「受け子」を逮捕していく中で、奪った金がどこに消えているのかを追っていったところ、この3人の存在が見えてきたのだ。警視庁は長期間にわたる内偵捜査を経て、今回の一斉逮捕に踏み切った。

ところが、逮捕された3人は容疑を一部否認しているとされる。「詐欺で得た金だとは知らなかった」という趣旨の供述をしているようだが、捜査当局は客観的な証拠を積み重ねており、彼らが詐欺グループとの関係性を認識した上で資金洗浄に加担していたと見ている。その取引の頻度や金額の大きさから見ても、「知らなかった」という弁解が通用するとは思えないのが正直なところだ。

被害金十数億円を暗号資産で洗浄か「相対屋」の男3人逮捕 巧妙手口の全容
※本画像はAIにより生成されたイメージです

被害の実態と手口の詳細

では、この「相対屋」たちは具体的にどのような手口で犯罪収益を洗浄していたのだろうか。その仕組みを理解するには、まず現代の特殊詐欺がどれほど組織化されているかを知る必要がある。

特殊詐欺グループは、役割ごとに細かく分業化されている。被害者に電話をかけて騙す「かけ子」、現金を受け取りに行く「受け子」、そしてその金を上層部に届ける「出し子」。さらにその上には指示役がいて、最終的には海外にいる首謀者に資金が流れていく。カンボジア特殊詐欺拠点が判明、東京ドーム3個分の巨大施設で3人逮捕という事件が報じられたように、詐欺グループの拠点が海外に置かれるケースも珍しくなくなった。

そもそも、なぜ現金を暗号資産に変える必要があるのか。答えは単純で、現金のままでは足がつきやすいからだ。銀行口座を経由すれば記録が残る。タンス預金にしておいても、いつかは使わなければならない。ところが暗号資産に変換してしまえば、その資金は電子データとなり、世界中のどこへでも瞬時に送金できる。しかも、適切な対策を講じれば追跡は極めて困難になる。

逮捕された3人は、この変換作業を「ビジネス」として請け負っていた。詐欺グループから大量の現金を預かり、それを暗号資産に変えて指定のウォレットに送金する。その際、一定の手数料を受け取る仕組みだったとされる。報道によれば、その手数料率は数パーセントから十数パーセントに及んだとみられ、十数億円という取扱額を考えれば、彼ら自身も相当な利益を得ていた計算になる。

実際の変換作業では、複数の暗号資産取引所のアカウントを使い分けていたようだ。一度に大きな金額を動かせば怪しまれるため、細かく分散して取引を行う。さらに、ビットコインだけでなく、イーサリアムやその他のアルトコインも駆使し、ブロックチェーン上での追跡を撹乱する工夫も凝らしていたとみられている。考えてみれば、これだけの専門知識と手間をかけているからこそ、「相対屋」という存在に価値があるのだろう。彼らなしには、詐欺グループも大量の現金を安全に「回収」できないのである。

背景にある社会問題

この事件が浮き彫りにしているのは、特殊詐欺がもはや単独犯や小規模グループの犯行ではなく、高度に専門分化した「犯罪産業」と化しているという現実である。詐欺を実行する者、金を運ぶ者、そしてその金を洗浄する者——それぞれが独立した「業者」として存在し、互いに依頼と報酬の関係で結びついている。

こうした分業化が進んだ結果、末端の実行犯を逮捕しても、本丸である首謀者や資金の流れには辿り着けないケースが増えている。特殊詐欺で4人逮捕、被害総額31億円か|半年で170人が標的にという事件でも明らかなように、被害総額は年々増加の一途を辿っているにもかかわらず、被害回復率は依然として低いままだ。その大きな要因の一つが、今回問題となっている資金洗浄ルートの存在なのである。

暗号資産という技術自体に罪はない。むしろ、ブロックチェーン技術は金融の民主化や国際送金の効率化といった面で大きな可能性を秘めている。しかし、その匿名性と国境を越える性質が、犯罪者にとって格好の道具となってしまっている現状は深刻だ。各国の規制当局も対策を講じているが、技術の進歩に法整備が追いついていないのが実情である。

日本国内でも、暗号資産交換業者には厳格な本人確認(KYC)が義務付けられている。ところが、今回の「相対屋」のように、正規の取引所を介さない個人間取引となると、その規制の網をすり抜けてしまう。もちろん、こうした取引自体が違法というわけではないが、結果として犯罪インフラとして機能してしまう余地が残されているのだ。

さらに厄介なのは、こうした資金洗浄サービスが「闇バイト」のような形で若者を巻き込み始めていることだ。SNSで「簡単に稼げる仕事」として募集がかけられ、自分の銀行口座や暗号資産アカウントを貸し出すだけで報酬がもらえるという甘い誘いに乗ってしまう若者が後を絶たない。彼らは知らないうちに犯罪の片棒を担がされ、ある日突然、警察の捜査対象となる。SNS型投資詐欺で70代男性が1億4500万円被害 61歳の男を逮捕【奈良】のような事件で被害者となる高齢者がいる一方で、加害者側にも社会経験の浅い若者が取り込まれているという構図は、この問題の根深さを物語っている。

捜査・裁判の現状と今後の展開

今回の逮捕を受け、警視庁は引き続き詐欺グループ本体との関係性を解明する方針だ。「相対屋」として活動していた3人が、どの詐欺グループとどのような経緯で接点を持ったのか。その指示系統や報酬の受け渡し方法など、捜査すべき点は多岐にわたる。

組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)という罪名は、それ自体で5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金という法定刑が定められている。しかし、今回のように取扱金額が十数億円に及ぶ場合、その悪質性から厳しい量刑が予想される。過去の判例を見ても、大規模なマネーロンダリング事案では実刑判決が言い渡されるケースが大半だ。

ただし、裁判においては「詐欺で得た金だと認識していたかどうか」が争点になる可能性がある。容疑者側が「知らなかった」と主張している以上、検察側はその認識を立証する必要がある。取引の頻度、金額、詐欺グループとのやり取りの内容など、客観的な証拠をどこまで積み上げられるかが勝負の分かれ目となるだろう。

捜査当局にとって、今回の事件は「資金洗浄インフラの解体」という大きな目標に向けた一歩でもある。詐欺グループの末端を何人逮捕しても、資金の流れを断ち切らない限り、組織は温存されてしまう。その意味で、今回のような「相対屋」の摘発は、犯罪組織の心臓部を狙った作戦と言えるかもしれない。

今後は、押収した暗号資産や取引記録の解析が進められることになる。ブロックチェーンは「取引履歴が改ざんできない」という特性を持つため、一度記録された送金の流れは永久に残る。捜査機関がウォレットアドレスを特定できれば、そこから資金の行き先を追跡することも不可能ではない。警察官装い6500万円詐取 カンボジア拠点の国際詐欺グループ関与か 39歳男逮捕のように海外拠点との繋がりが明らかになれば、国際共助による捜査も視野に入ってくるだろう。

私たちが身を守るためにできること

ここまで事件の全容を見てきたが、読者の皆さんが最も知りたいのは「自分や家族が被害に遭わないためにどうすればいいか」ということではないだろうか。残念ながら、詐欺の手口は日々進化しており、「これさえ守れば絶対に安全」という魔法の対策は存在しない。それでも、いくつかの心構えを持っておくことで、被害リスクを大幅に減らすことはできる。

まず大前提として、「うまい話には必ず裏がある」という意識を持つことが重要だ。投資で確実に儲かる、ローリスクでハイリターンが得られる——こうした誘い文句は、ほぼ間違いなく詐欺の入り口である。特にSNSを通じて見知らぬ人物から持ちかけられる投資話は、最初から疑ってかかるべきだ。相手がどれだけ親切そうに見えても、お金が絡んだ瞬間にその信頼は一切当てにならない。

次に、高齢の家族がいる場合は、日頃からコミュニケーションを密にしておくことをお勧めする。詐欺被害に遭う方の多くは、「家族に迷惑をかけたくない」「恥ずかしくて相談できない」という思いから、誰にも言えないまま被害額が膨らんでいくケースが多い。普段から「何かあったら相談してね」と声をかけ、相談しやすい雰囲気を作っておくことが、被害の早期発見・早期対応につながる。

また、最近増えているのが、公的機関や金融機関を装った詐欺だ。「警察です」「銀行です」「市役所です」といった電話がかかってきたとき、相手の言うことを鵜呑みにしてはいけない。必ず一度電話を切り、公式の連絡先を調べて折り返し確認する習慣をつけてほしい。本物の警察や銀行が、電話でキャッシュカードの暗証番号を聞いたり、現金を用意するよう指示したりすることは絶対にない。

暗号資産に関しても注意が必要だ。「暗号資産で運用すれば高利回り」「

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